最新版データで読む「現金派が多い県・キャッシュレス先進県」はどこ?――地方における現金払いとキャッシュレス決済格差の実態を詳細解説

最新版データで読む「現金派が多い県・キャッシュレス先進県」はどこ?現金払いとキャッシュレス決済の利用格差の実態を示す日本の都市風景を描写。
POINT

要約

政府統計と業界団体の最新公表資料を整理すると、日本全体のキャッシュレス決済比率は2024年に42.8%まで伸長しましたが、都道府県レベルでは20%台前半から50%超まで大きな開きがあります。現金中心の地域では高齢化や端末導入コストが障壁となり、都市圏との差が固定化しつつあります。本稿では①全国動向、②地域格差の実数、③格差を生む要因、④政府・自治体の対策、⑤残された課題をやさしい言葉で解説します。

1.全国的なキャッシュレス比率の動向

経済産業省の算出結果(2024年)

経済産業省は2025年3月に「2024年のキャッシュレス決済比率」を公表し、比率は42.8%(取扱高141兆円)と政府が掲げた「2025年までに4割」の目標を達成したと示しました。内訳はクレジットカード82.9%、コード決済9.6%、電子マネー4.4%、デビットカード3.1%です。経済産業省ニュースリリース参照。

決済手段別の伸び方

  • コード決済は前年比+18.4%で最速成長。加盟店がQRコード印刷だけで導入しやすい点が地方でも追い風。
  • 電子マネーは交通系ICの全国相互利用が進み、地方鉄道・バスでも利用シーンが拡大。
  • デビットカードは伸び率が低いが、金融機関系アプリとの連携が進めば潜在顧客は多い。

2.地方と都市部の利用格差—数字でみる現状

都道府県別キャッシュレス比率(2024年・全国家計構造調査ベース)

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が2026年1月に公開した都道府県別分析では、東京都・神奈川県など大都市圏が50%超でトップグループ、対照的に四国・九州の一部や山陰地方は25%前後にとどまる結果となりました。図表は協議会公表ページで閲覧できます。

電子マネー利用世帯率の地域差(家計消費状況調査)

総務省「家計消費状況調査」年報(令和6年)によれば、電子マネーを利用した世帯の割合は全国平均63.5%ですが、地方区分別に見ると関東・近畿が7割台、東北・四国は6割弱と差が出ています。詳細は調査報告Ⅱ章に掲載されています(PDF p.10)。

3.格差が生まれる背景

インフラ・店舗側要因

都市部では大型チェーンが先行して端末を導入し、決済データを販促に活用する循環が生まれています。一方、小規模店舗が多い地方では「月額固定費が負担」「通信環境が不安定」といった理由で導入が遅れがちです。自治体が端末購入補助を行っても〈更新費用は自己負担〉というケースが多く、継続率が低い現状があります。

人口構成と高齢化

家計消費状況調査では70歳以上の電子マネー利用世帯率が45%台にとどまります。高齢化率が高い地域ほど現金ニーズが根強く、店舗側も「客層が現金払いを希望するため端末を置いても利用されない」と考えやすい負の連鎖が起きています。

観光・インバウンドの影響

  • 訪日客が集中する都市や観光地では「多言語決済アプリ」導入が進み、結果的に地域住民の利用率も上昇。
  • インバウンド比率が低い内陸部では、カード手数料を価格転嫁しづらいとの声が多い。

4.政府・自治体の取り組み

キャッシュレス推進政策の枠組み

政府は2018年策定の「キャッシュレス・ビジョン」で2030年までに比率65%の中間目標を掲げ、ポイント還元事業やマイナポイントなど需要喚起策を実施してきました(政府広報オンライン解説)。

地方創生×デジタル施策

内閣官房と経済産業省が提供する「RESAS(地域経済分析システム)」は、自治体が自地域のキャッシュレス利用状況を可視化し、商店街支援策を検討できるデータ基盤として活用されています。RESAS紹介ページ参照。

5.今後の論点と課題

現金派の安心感をどう取り込むか

高齢者を中心に「スマホ操作が不安」「災害時は現金が安心」といった声は根強く残ります。店舗端末の停電対策や、家族に代わって決済できる代理機能など「現金と同等の安心感」を確保する設計が求められます。

デジタル・ディバイド解消策

  1. スマホ教室を商工会と連携して常設化し、実際の決済体験を提供。
  2. 自治体ポイントを地域限定のコード決済で配布し、使い切りを促進。
  3. 行政窓口やバス運賃など公共サービスのキャッシュレス化を優先し、住民の「生活必需」分野から慣れを醸成。

キャッシュレス決済は利便性と効率性を高める半面、利用しない人が不利益を被らない配慮が欠かせません。地域ごとの実情を踏まえた「混合決済環境」の最適解を探る取り組みが、今後いっそう重要になります。